( 090427 )


24/7




例えばあの子が太陽の下を歩くのを見ると、そのまま透けて消えてしまうんじゃないか・なんてことを思う。 色素の薄い髪と雪のように白い肌がそんな危うさをを演出させているのだろうが、まったく馬鹿みたいな話だ。 そうは思いつつもシリウスは手にしていた「呪文学問題集」を置いて窓際で揺れるカーテンをさっと手前に引き寄せた。 図書室の最奥の机(彼女の特等席だが、)で何冊もの分厚い本を枕にすやすやと寝息を立てているに 降り注ぐ陽光を遮る為だ。少々寝心地の悪そうな体勢だったが、シリウスが傍に来ても彼女は起きる気配を見せようともしない。


(朝からずっと眠そうだったしな。朝食の時とか、)


明け方まで本を読んでいたらしく、小さく欠伸を漏らしながら半ばリリーに手を引かれるように大広間に入ってきた時のの眠たげな表情を思い浮かべてシリウスは無意識に微笑んだ。その後の変身術の授業でも堂々と居眠りをして マクゴナガルに説教されていたのを思い出す。そうして、最近の自分は気がつけば彼女の姿ばかりを目で 追っていることを改めて実感した。「そんなに気になるなら話しかければいいじゃないか、」というジェームズの言葉も 尤もだとは思うが(そしてこれは知られれば確実にからかいのネタになることを確信しているが、) ただ声をかけることすら躊躇ってしまう。いままで散々女癖が悪いと言われ続けてきただけに、これには自分でも吃驚だった。


(...にしても、無防備すぎる)


薄く開いた唇から漏れる呼吸だとか、規則的に上下する身体だとか、彼女を構成するすべての要素がシリウスを魅了して やまなかった。これはもう病気なんじゃないかと思う。重病だ。聖マンゴの病室をひとつ空けておいて貰った方が 良いのかもしれない。 両側に聳える本棚で姿が隠れるのを幸いにして、そっとに触れてみた。 透き通るような冷たい肌の感触。ちゃんと触れているのにあまり現実味を帯びないそれに、シリウスは少し怖くなる。 ほとんど衝動的に、彼女の生命を確かめるように、ゆっくりと顔を近づけていく。そして唇が触れるか触れないかという ぎりぎりの距離までくると、流石にはっと我に返ったのと同時に、のトルコ石色の瞳がシリウスの灰色の瞳をこれ以上ないほどの至近距離で捉えた。


「...ブラック、?」


さあ、諸君。いまから5秒以内にあの子が自分をキス魔だと誤解しないような上手い言い訳を考えてくれ。